Little TWINS 1

 

悲しいことがあった。でもそれは必要なことだった。
だから僕らはその悲しみに耐えられた。
 
 
 
11月4日
今日はいい天気だった。外では新雪がキラキラ輝いていてとても眩しい。
サキが気づかない間に庭に出ていて僕を呼んでいた。
サキ、僕は今日お外には出られないんだ。ごめんね。
明日ならきっとお医者様もお外に出ることを許してくれる、
だからそんな顔しないで。
 
夕刻、サキがふてくされている。
当然かな。実はここ1週間サキと遊んでいないし手も繋いでないんだ。
隣で夕食を食べているサキの手にそっと触れてみるといつも通り
サキの温もりがそこにあって安心してサキの顔を見ると笑ってくれていた。
そんなサキの表情に僕も笑ってしまった。
 
サキ、ありがとう。
僕はいつだって君に救われている。
 
11月10日
朝起きると、枕元に1本の白バラが置いてあった。
ほのかに香りが漂っていて、よく見ると綺麗に棘が取られていて怪我をしないですんだ。
サキだろうか。
そう思っていると部屋にサキが笑顔で入ってきた。
バラのことを聞いてみると自分ではないときょとん、とした顔で言った。
いったい誰が置いてくれたのだろう。
バラの香りのお陰だろうか、今日はなんだか体が軽くて久しぶりにサキと遊べた。
夜、両親にバラのことを聞いてみると知らないよ、と言われた。
誰が置いてくれたのだろう・・・。
 
11月28日
あの日から何度か同じように枕元に白バラが置かれるようになった。
サキは気味が悪いよ、と心配していたけどバラが置かれた日は体の具合が良くて
お外に出られるからいつの間にかサキも気にしなくなった。
僕もサキと遊べるからそれでいいか、と気に留めるのを止めた。
 
でも、なんだが違和感が・・・・気のせいだよね?サキ。
 
12月16日
ここ何週間か吹雪が続いている。その所為か枕元のバラが置かれなくなってしまった。
体の具合も良くない、なんだか前よりも良くないような気がするんだ。
サキも心配そうな顔して僕の手を握っている。
ごめんね、すぐに良くなってまたお外で遊べるようになるから。待っててね。
 
夕方、お医者様がやってきて難しそうな顔をして僕の体に聴診器を当てる。
検診が終わると両親を部屋の外に連れて行ってしまった。
隣で手を握っていたサキが閉められた扉に耳を当てて外の声を聞き取ろうとしている。
サキ、何を話しているのか聞こえたの?
 
その後なんだか家族がよそよそしかったのは気のせいではなかった筈。
 
12月21日
長く続いた吹雪以来1度もバラが置かれていない。
体の具合も良くない。この日記を書くのが今の僕の精一杯。
サキ、そろそろクリスマスだね。サンタさんに頼むプレゼントは決めた?僕は・・・・
 
なんだか最近音が聞き取りにくくなったような気がする。
 
12月24日
今日はクリスマスイブ。枕元にはバラではなく、キラキラの包み紙に包まった大きな箱だった。
開けてみると前に欲しがっていた仕掛け時計だった。流れる音楽が好きなんだ。
サキも好きだよねこの音楽。
傍に居たサキにそう聞くと大きく笑顔で頷いた。
サキは何を貰ったの?ああ、それずっと欲しいって言ってたよね。
 
その時はそう言ったけど本当は大好きなサキの顔すら見えてなかったんだ。
 
12月31日
朝、バラの香りで起きた。
どうやら両親が用意してくれたみたいだ。今日は年明けだもんね。
でも、前みたいに体の具合が良くならない。だけどせっかく両親が用意してくれたんだもん
今日一日だけでも頑張るよ。
 
気づいたら、ベッドの上にいた。
1日もたなかったみたい。使えない体だ。そう呟いたらサキに怒られてしまった。
お母さんから貰った大切な体をそんな風に言っちゃだめ、だって。
ごめんね、サキ。僕なんだか弱気になってきてしっまているみたい。
 
1月18日
やっとのこと体を起こしてこの日記を手探りで書いている。
もう、ペンを持つのが精一杯。
お父さん
お母さん
 
サキ
何も見えないよ
何も聞こえないよ
 
怖いよ
 
ぼく は  どうなるのか な
 
 
 
サキ?
 
そこ  に 居る  の?
 
 
 
 
 
「 居るよ 」
 
よかっ  た
凄く    怖かった んだ
 
サキ ぼく   おもったん だ
あ のバラ 神様が くれた   キセ キだって
「 うん、そうだね 」
 
サ  キ ぼ く
「 うん 」
 
 
し あわ   せだ たよ
 
おと さ  ん
 
おかぁ さ ん
ありが   と う
 
サ キ
「 うん? 」
 
 
 
 
 
ひ と  りぼ  ちにし て
 
 
ごめ  ん    ね
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「 兄さん 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「 兄さん 」
 
 
 
 
 
 
 

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