快晴が何処までも広がる。
7月4日、今日は一段と日差しが強く肌がひりひりする程だ。
「・・・はぁ」
タンクトップから伸びる細腕を擦りながら近くの木陰に入るが綺麗に出来上がっているアスファルトに反射してさほど変わりない。
「・・・・日傘欲しい」
そうポツリと漏らし快晴の空を煽いだ。
「1つくらい雲があったって良いじゃない」
あまりの眩しさにいやいやサングラスを取り出してかける。
「鼻に汗掻くから嫌なんだよネェ」
文句を言いながらサングラスをかけなおし渋々立ち上がると遠くで熱気に揺れる人影を見つけた。
「・・・あれは」
「あっつ・・・」
もう殆ど溶けてしまっているアイスを咥えながらビーチサンダルが溶けそうなアスファルトの上をだるそうに歩いている。
周りは熱気で揺らぎっぱなし。だからだろうか、迂回せずにその人物がいる道を歩いてしまったのは。
「やぁ!彼方くん」
「・・・・・・」
その声に思わず素通りしようとするが
「ちょ、ちょっと! 置いて行かないでよっ!!あえて聞く事あえて聞いてよっ」
このクソ熱いのにぴったりと腕を掴まれ制止されてしまった。
「・・・はぁ、じゃぁあえて聞きますが。何してるんですか? サキさん」
1つ溜め息を溢してからこの人の茶番に付き合うべく仕方無しに尋ねる。
「良くぞ聞いてくれたね!彼方くん」
仁王立ちでふんぞり返ってそういうサキに心底げんなりする。
「今日もこの慣れない国で生きる為仕事を探していると思った以上の強い紫外線に当てられてしまってね。肌はヒリヒリするし頭はクラクラするし、喉は乾いたしで散々なめにあっていたのだよ。
けど、僕はこのとおり文無しだろう?だからこんな所で伸びていたということだよ」
「サキさん・・・せめて2行までに収めて」
大きいため息をついてそう言うときょとん、とした顔で“?”を浮かべる。
「で、ついでに彼方くんに言っておきたいことがあるんだが」
「? なに?」
「倒れるよ」
「へ?・・・・、ちょっサキさん?!!」
何が?と聞く前にふら付いたサキへ咄嗟に手を伸ばして地面に倒れる前に腕の中に収める。
「サキさん!サキさんっ!!」
軽く揺すりながら名前を叫ぶが閉じられた目蓋は一向に開く様子はない。
よく見たら顔が赤く、熱を帯びている。額に手を当てれば熱く汗が滲んでる。
「熱射病か。まったくっ、慣れない日差しに調子こいてあたるから!」
彼方より若干長身のサキの体は思った以上に軽いのは今に知ったことではない。
そんなサキを軽々抱き上げて暑い中走り抜ける。
サキ サキ サキ
「・・・・ナ ギ・・・?」
調子に乗って外ではしゃぎすぎるからだよ?
「ナギ、俺」
うん?
「・・・・手、握って。ナギの手ひんやりしてて気持ちいいから」
うん
ナギの手はいつだって冷え切っていて繋ぐ時とてもかわいそうな気持ちになってしまう。
でもそんな気持ちを押し殺して笑うと、ナギも幸せそうに笑うからそれで良いかと思っていた。
よく言うよね、手の冷たい人は心が温かい人だって。
サキ、お休み。夕飯の時間になったら起こすから
「・・・・行かな い でっ」
何言ってるの?サキ どこにも行かないよ
「行か な いで」
サキ?
「い かな い・・・」
「サキさん?」
手に触れた感触はとても優しい温もりだった。
「・・・・・彼方くん?」
ぼんやりとした視界ではっきりしてきた人物の顔にそっと手を伸ばして存在を確かめる。
「ここ・・・・どこ?」
「俺の知り合いの叔父さんの病院、サキさん熱射病で倒れたんですよ?」
「ああ、僕いつもそうなんだ。自分のこと過信してるから」
(・・・気づいてたんだ)
辺りを見渡してからゆっくり起き上がるサキの背中に手を添えて支える。
「ここまでしてくれなくて良かったんだよ?」
まっすぐと彼方の目を見据えるその瞳は年相応の色が伺えた。
(こんな時だけ年上なんだから、参るよ)
「いえ、不本意ながらあなたは俺の恩人ですから」
「ふふ、そんなのお互い様でしょ」
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